推進事例

地元金融機関と組んでの県内初のキャッシュレス化
~習志野市役所~

2020年04月10日
Case Study
習志野市庁舎

 千葉県の北西部に位置する習志野市.千葉市などと隣接し,東京都心からも30㎞ほどとアクセスのよい立地です.人口は約17万人と千葉県内で10番目の市です.約100年前に存在した習志野俘虜収容所をルーツとする習志野ソーセージも有名です.写真の市庁舎はグッドデザイン賞を受賞したそうです.

 習志野市役所では,2020年2月から,住民票などの証明書の支払いでキャッシュレスが使えるようになりました.主要な電子マネーとクレジットカードをカバーしており,AliPayとWeChatPayも使えます.
 今回は,総務部情報政策課の早川さん,高瀬さん,井上さんにお話を伺いました.

総務部情報政策課の早川さん,高瀬さん,井上さん
◆キャッシュレスの導入

Q.キャッシュレスの導入に取り組んだのはいつ頃ですか?

A. 2019年の7月にキャッシュレス化への検討を始めました.10月には協力事業者の検討をはじめ,11月に決定しました.財政課,会計課,広報課などとの調整を経て2020年1月24日にキャッシュレス化を公表しました.その後,1月27-29日にかけて職員研修を行い,2月4日にサービスを開始しました.

Q.キャッシュレス支払いができるのはどの場面ですか?

A.本庁舎のグラウンドフロアの他,東部連絡所,JR津田沼駅南口連絡所,西部連絡所でも使えます.住民票関係証明書,戸籍関係証明書,印鑑関係証明書,課税・所得証明書,固定資産評価関係証明書などがキャッシュレスで支払えます.

Q.キャッシュレスの導入にあたって,どのような点を考慮しましたか?

A.多様な決済方法が可能か,新たな投資をせずに済むか,低コストであるか,機器が使いやすいか,という4点を軸に据えて決済事業者の選定を行いました.キャッシュレス化への対応のために新たな予算を組もうとすると,手続き上の問題で導入が遅れてしまいますので,現行予算で対応できることも重要でした.最終的には,千葉銀行をパートナーに選定しました.

Q.新たな投資をせずに済むというのはどういうことですか?

A.キャッシュレス用の端末ではWifi環境が必要なものが多く,端末を導入するためにWifi工事が必要になります.今回選定した端末はSIMカードが搭載でき,Wifi工事が不要になったほか,端末を自由に持ち運ぶこともできるようになりました.例えば,足腰の悪い利用者の手元まで端末を持っていくことができます.

キャッシュレス端末

 習志野市が導入した端末は,1台でクレジットカードリーダー,電子マネーリーダー,QRコードリーダー,レシートプリンターを兼ねており,非常にコンパクトです.通常はクレジットカードリーダー,タブレット端末,レシートプリンターが必要でしたが,1台にすることで運用の手間が省けます.

◆費用対効果

Q.キャッシュレス導入にあたってどれくらいの費用がかかりましたか?

A.端末5台で始めましたので,端末の初期費用5台分(13530円×5台=67650円)が必要でした.ランニングコストは,端末の利用代金が1台当たり月額550円,通信料は1台当たり月額242円に抑えられています.これに決済手数料(3.25%)やレシート用のロール紙を含めても総額で,利用率が想定どおりであれば年間15万円以内に抑えられると試算しています.

参考:千葉銀行ホームページ
https://www.chibabank.co.jp/hojin/eb_service/cashless/device.html

Q.費用に対してどれくらいの効果を見込んでいますか?

A.効果の算定は非常に難しいですが,キャッシュレスにすることで支払い1件当たりの時間を16秒短縮できるとの民間会社の調査結果が出ています.時間を省けた分を人件費換算すると,費用を上回る効果が出ると考えていますが,実際に運用してみないと分からない部分もあります.費用対効果も大切ですが,市役所は営利企業ではありませんので,利用者の利便性向上も重要です.支払いのスピードが上がれば,市民の皆さんの待ち時間を減らすことができます.

Q.キャッシュレスの利用状況はいかがでしょうか?

A.他の自治体さんでは,3-4%の利用実績があるようです.そこで,利用率5%を想定しましたが,導入から10日間の利用率も約5%で推移しています.全体のキャッシュレスのうち電子マネーが約70%,電子マネーのうち交通系が約40%です.利用者の方にキャッシュレスについて伺ってみましたが,現金を用意しなくてもいいと,好評でした.

◆今後の展開について

Q.今後,キャッシュレスを広げていく予定はありますか?

A.2つの点でキャッシュレス化の取り組みを進めようとしています.まずは,利用範囲の拡大です.公金は種々様々な場面で扱っており,例えば家庭ごみなどを持ち込むクリーンセンターでは,現金で料金を受け取っています.キャッシュレス化ができれば運営の効率も上がるのではないかと思います.公民館や体育館などでも利用できないか検討しています.さらに進んで,税金や保険料等でも使えるといいと考えています.
もう一つは,決済ブランドの拡大です.現在でもかなり多くのブランドに対応していますが,利便性を高めるため,さらに使えるブランドを増やせたらいいと考えています.

 市役所でのキャッシュレスの導入には多方面での調整が必要ですが,習志野市は情報政策課が中心となって進めたことで,調整のスピードが上がったのではないかと感じました.キャッシュレス化は業務のデジタル化,データ化への取り組みの第一歩です.一部の部門だけで進めるのではなく,全体の業務の在り方の中で検討することで,キャッシュレス化を目的とするのではなく,手段として導入できるのではないでしょうか.また,市役所のような公的機関にとっては,決済手数料は重い負担です.決済事業者には公的機関への割引サービスの導入が強く求められます.

取材先:習志野市役所 総務部情報政策課 早川様,高瀬様,井上様.